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家計のアドバイザー通信 (2015年11月号)

―退職金の税金と確定申告―


Q.今年7月に定年退職し、退職金を受け取りました。来年、確定申告が必要ですか。
 勤続年数     40年
    退職金   2500万円

A.退職金は長年の勤労に対し、一時に支払われる報酬的な意味があることから、「退職所得控除」や「他の所得と分離して課税」など、税負担を軽減するための優遇措置があります。

質問のケースで所得税を計算してみましょう。

①退職所得控除額: 右表から
800万円+70万円×(40年-20年)=2200万円
②課税退職所得: 控除後の退職金額の1/2
(2500万円-2200万円)÷2=150万円
③所得税額: 税額表から (A×B-C)
150万円×5%-0円=75,000円

<退職所得控除額>
勤続年数控除額
20年以下40万円×勤続年数
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)



<税額表(H27)>
A課税退職所得金額B税率C控除額
1,000円~194.9万円0.050
195.0万円~329.9万円0.19.75万円
330.0万円~694.9万円0.242.75万円
695.0万円~899.9万円0.2363.6万円
900.0万円~1799.9万円0.33153.6万円
1800.0万円~3999.9万円0.4279.6万円
4000.0万円~0.45479.6万円

ワン・ポイント・アドバイス:確定申告をした方が有利な場合も!

退職金の税金については、通常上記の所得税と復興特別所得税が源泉徴収されるため*、原則として確定申告は必要ありません。(*住民税の特別徴収も有)

ただし他に所得がある場合(質問のケースでは7月までの給与など)は、確定申告をすることで、基礎控除や配偶者控除、生命保険料控除などの所得控除や、配当控除などの税額控除などによって、所得税などが還付される場合があります(在職中は年末調整で精算)。

    本記載は、2015年11月現在の税制に基づく一般的な取扱について記載しています。
税務上の取扱が税制改正などで変更となることがありますので、ご注意ください。
また、個別の取扱等につきましては、所轄の税務署等にご相談ください。

あなたの家計のアドバイザー             

家計のアドバイザー通信 (10月号)

―公社債等の税制改正―


Q.社債を持っているのですが、来年から課税方法が変わると聞きました。今年中に売却した方が得でしょうか。

A.来年(2016年)1月1日から、現在原則非課税である公社債(国債、地方債、社債など)や公社債投信(公社債等)の売却益(譲渡益)が、株式や株式投信(株式等)の売却益同様20%申告分離課税の対象になります(プラス復興税0.315%)。

また、現在は源泉分離課税の対象である公社債等の利子や収益分配金、および総合課税になっている債券の償還益についても、申告分離課税の対象になります。

<公社債等の税制改正のポイント>

201512月まで20161月から
売却益非課税申告分離課税  (-20.315)%
利子等源泉分離課税(20.315%)
償還益総合課税
上場株式等との損益通算不可
譲渡損失の3年繰越控除不可

ワン・ポイント・アドバイス: 公社債等の譲渡損と株式等の譲渡益が通算可能に!
来年1月から、株式等と公社債等の損益通算が可能になります。また、現在株式等のみが可能な売却損(譲渡損)の3年繰越控除が、公社債等の譲渡損失でも可能になります(繰越期間中は、毎年確定申告が必要)。

よって、お手持ちの債券を今年中に売却するかどうかについては、当該債券のみならず他の保有資産の現在の売却損益の状況や今後の価格変動の見通し、および市場動向や発行企業の状況なども考慮して、総合的に判断することが必要です。
そして何より優先すべきは、自分のライフプランにあった運用目的に則した行動です。

なお、来年からは公社債等についても特定口座に預け入れることができるようになります。手続きなどの詳細については、お取引の証券会社などにご確認下さい。

    本記載は、2015年10月現在の税制に基づく一般的な取扱について記載しています。
税務上の取扱が税制改正などで変更となることがありますので、ご注意ください。
また、個別の取扱等につきましては、所轄の税務署等にご相談ください。

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家計のアドバイザー通信 (2015年9月号)

―介護保険の改正(8月1日~)―


Q.公的介護保険の自己負担が2倍になると聞きましたが・・・。

A.昨年成立した改正法によって、この(2015年)8月1日から介護保険制度においていくつかの点が変更されました(右表参照)。

ご質問の、介護サービスを利用したときの自己負担も変更点の1つです。
ただし、自己負担が1割から2割に増える人は、収入が年金のみの場合で年収280万円以上、年金以外にも収入がある場合は合計所得金額が160万円以上の方々です。
自分の自己負担割合については、市区町村から交付される「負担割合証」をご確認下さい。

<介護保険の8月1日改正のポイント>
一定以上の所得がある場合、自己負担が2割になる。
一定以上の所得がある場合、月々の負担上限(高額介護サービス)が、37,200円から44,400円になる。
介護3施設の食事・部屋代の負担軽減判定に、配偶者の課税状況や預貯金などの資産額が追加される。
特別養護老人ホームの相部屋に入所する課税世帯は、新たに「室料相当」の負担が必要になる。


ワン・ポイント・アドバイス: 民間の介護保険で、公的介護保険の補完を!

自己負担が2割になっても、必ずしも支払額が2倍になるとは限りません。介護保険には月々の負担の上限(高額介護サービス費)があるからです。
一般的な所得の方の負担上限は37,200円(月)です。よって、現在の支払い額が月1万円の場合は2万円になることもあり得ますが、月2万円の場合は4万円にはなりません。1ヶ月の自己負担は37,200円までです。

ただし今回、この高額介護サービス費も改正されました。所得が現役並みである人がいる世帯については、負担上限が44,400円(世帯合計)にアップします(新設)。これに該当する方については、これまでの負担額が2万円であった場合、今後4万円になることもあり得ます。

公的介護保険は、高齢者の増加により今後ますます縮小することが予想されます。民間の介護保険などを利用して、介護リスクに備えることをお勧めします!!

本記載は、2015年9月現在の公的介護保険制度の概要を説明しています。
詳細は、市区町村の公的介護保険制度の窓口までお問い合わせください。
あなたの家計のアドバイザー